ウェルネット研究所の髙木と申します。
今回ご紹介する施設様は、私が担当している特別養護老人ホーム山手さくら苑様です。山手さくら苑様は、ひょうごノーリフティングケアモデル施設であり、MIS※1を通じて定期的に伴走支援を実施しています。
山手さくら苑様の取り組みは、第 4 回目のウェルネットレポートでも取り上げましたが、今回はMIS 個別ケアの取り組みについてレポートいたします。
山手さくら苑様では、セーフティケア※2プロジェクトを立ち上げ、利用者様とスタッフの双方にとって安全なケアの実現に取り組んでいます。
利用者様とスタッフの双方にとって安全なケアを実現するために、移乗方法の見直しや介護リフト使用の定着、スタッフの移乗技術向上を目的にした研修を定期的に実施しています。同時にスタッフの方に個別支援が望ましい利用者様を 2 名ピックアップしていただき、自立支援のための個別ケアを集中的に実施しました。
【 A様 】
(1)現状の課題
・ 身体が大きく、立位保持介助の負担が大きい。
・スライディングボードで移乗していたが、移乗後に緊張が高くなる。
・トイレ誘導が困難。
・ 円背姿勢により食事が困難。
・ 臥位・坐位時のポジショニングに不安。
・仰臥位がとれない。
(2)実施した対策と3 カ月後の成果
対策①:リフト移乗の導入
・従来のボード移乗からリフトを使用した移乗に変更し、介助負担を軽減。
移乗後の筋緊張が無くなり、不良姿勢が改善。
対策②:ポジショニングの改善
・ポジショニングの基本に基づき臥床時のポジショニングを見直す。
円背姿勢の改善が見られ胸郭が広がり、呻吟が減少。
・坐位時にもポジショニングによって短時間では良い姿勢を保持できるようになった。
【 S 様 】
(1)現状の課題
・ 臥位・座位姿勢に不良姿勢
・ 拘縮により足底がきちんとフットサポートに乗らず姿勢が崩れる。
・ スライディングボードの移乗が困難になってきている。
(2)実施した対策と3ヵ月後の成果
対策①:リフト移乗の導入
・身体アセスメントを見直し、リフト移乗に切り替える。スタッフの負担も軽減。筋緊張の緩和が見られた。
対策②:ポジショニングの改善
・円背が酷く仰臥位ができなかったので、円背の方でも背中全体にフィットする構造のスリングシートで少し吊る状態にして、背中全体を支え安定する姿勢で仰臥位の時間を設けた。
そうすると緊張が緩んできたので、背中全体をクッションで支え、仰臥位の時間を徐々に延ばしていった。
結果、円背の改善が見られ、ベッド上でリラックスして寝てもらえるようになった。坐位姿勢も改善し、良好な姿勢で食事を自分で摂ることができるようになった。
・認知機能の向上 。
・姿勢改善とともに、顔が前向きになり会話量が増え、笑顔が増加した。
今回個別ケアを実施した 2 名は継続的にフォローしながら、新たに個別支援が望ましい利用者様 2 名をピックアップしてもらい、個別ケアを実施していきます。
新たに実施した個別ケアの内容や変化はウェルネットレポートで報告をしていきたいと思っていますので、引き続きウェルネットレポートをご覧ください。
※1 MIS:ウェルネット研究所が提供しているノーリフティングケア定着・労働環境改善のための伴走支援サービス (詳しいサービス内容はこちら)
※2 セーフティケア:看護・介護現場におけるご利用者とケア提供者双方にとって安全なケアのことをいいます。具体的には、福祉用具の適切な使用、標準化されたケアなどにより、怪我や事故を予防し、心身の負担を軽減することを目的とします。